孤読な日々

ライトノベルを愛するブログ

比企谷八幡という、最高の主人公

 最終話12話の放送から1週間以上が経ちましたが、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』ご覧になりましたか?

 完結まで映像化というのは、凄いことですが寂しくもありますね。原作完結時もでしたが、しばらくロスに襲われてました……。

 

 ところで、ライトノベルを名作たらしめる要素の一つがキャラクターでしょう。その意味で、比企谷八幡はこの典型であり、最高の主人公だと思います。

 と分析めいたことを言いつつも、要するに好きなんです。どの主人公よりも、どのヒロインよりも、どのサブキャラクターよりも比企谷八幡が好きなんです。

 

※未読・未視聴の方はご注意ください。ネタバレの配慮とかないです。

 

 

 

ぼっち哲学という強力な惹き 

青春とは嘘であり、悪である。

青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺く。

自らを取り巻く環境のすべてを肯定的に捉える。

(中略)

彼らは悪だ。

ということは、逆説的に青春を謳歌していない者のほうが正しく真の正義である。

結論を言おう。

リア充爆発しろ。*1

 俺ガイルはこの「高校生活を振り返って」というテーマの作文課題、比企谷八幡の最高にひねくれたレポートから始まる。

 初めてアニメでこれを見た時、そしてそのあまりの面白さに駆られて買った原作を読んだ時、この1ページだけで俺ガイルの、延いてはライトノベルの世界に引き込まれたことを覚えている。

 

 誠勝手ながら、俺ガイルの読者は自分含め、コミュニュケーションが得意だと声高に言える人は少ないと思っていて(偏見)、しかしだからこそ、皆少なからず比企谷八幡に共感し、彼に憧れるのだと思う。そして、彼のボッチ哲学を求めて次の巻次の巻と読み進めるのではなかろうか。

 そうさせる力があるのが、比企谷八幡という主人公のなのだ。

 

 

共感の錯覚

 前述、少なからず比企谷八幡に共感するのだと書いたが、というよりは、共感した気になるというのが正確なようにも思う。

 

 というのも、創作物であれ実在の人間であれ当人にしかその感情は知り得ないというのもあるし、それ以上に比企谷八幡というのは優秀な人間であるからだ。優秀というのは文系科目の成績がどうこうという話ではなく、もっと総合的な話である。

 例えば、彼のように企画書を書き一人前に働ける高校生が何人いるだろうか。例えば、雪ノ下陽乃と言葉少なき婉曲なやり取りを繰り広げられる高校生が何人いるだろうか。ほとんど、いや、まずいないだろう。そういう話だ。

 

 しかし、彼のぼっち故の行動に自らを重ねる、共感の錯覚を得られるという点で、彼は親しみやすく憧れられる主人公を実現しているのかもしれない。

 

 

リアリストでありロマンチストである

非モテ三原則【(希望を)持たず、(心の隙を)作らず、(甘い話を)持ち込ませず】を心に刻んで生きているのだ。*2

 この非モテ三原則に代表されるように、小中学校時代の失敗を経てボッチ哲学を獲得した彼はリアリストだ。リアリストの皮を被ることで、期待を抑え心を守っている側面もあるやもしれないが、おおよそリアリストと言っていいと思う。

 

 ならば、「本物」を欲した彼はどうだろう。リアリストである彼ならば自らの考えを一蹴したのではなかろうか。希望を持って、心を許して、それで壊れることのない甘い本物を求める彼はどちらかと言えばロマンチストではないか。

 

 リアリストでありロマンチストであるというより、リアリストがロマンチスト寄りに変化したのかもしれない。しかし、どちらにせよ、この両立が彼という人間に奥行きを持たせているように思う。 

 

 

つまるところ、面倒臭い奴である

「言えねぇだろ。……こんなの、言葉になってたまるかよ」*3

 原作14巻、アニメ11話のこの台詞である。このシーンである。

 陸橋での雪ノ下への一連の告白のやり取りの中のこの一言。結局、比企谷八幡は好きだと言わない。言葉になってたまるかというのだ。

 

 もし、ここで好きだと言う彼がいればその彼のことも好きである。なにせラブコメディだ。しかし、ここで好きだと言わな買った彼のことは大好きである。

 彼と言う主人公の人間性が、まちがった青春ラブコメがここに詰まっている。

 

 これは俺ガイルのメインキャラクター全体に通ずる部分もあるが、つまるところ、比企谷八幡というのは面倒臭い奴なのである。こじらせた奴なのである。

 しかし、最高に魅力的な方向にこじらせたのが彼であるが故に、彼は最高の主人公なのだと思う。

 

 

以上、みんな大好き比企谷八幡のお話でした。それではまた。

*1:1巻11ページより

*2:3巻150ページより

*3:14巻397ページ