孤読な日々

ライトノベルを愛するブログ

【感想】春夏秋冬代行者 春の舞

 

 かくして世に四季の代行者が生まれたのである。

 

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『春夏秋冬代行者 春の舞 上』『春夏秋冬代行者 春の舞 下』

 著:暁佳奈 イラスト:スオウ 

 

の感想です。

 単刀直入に言って傑作。気の早い話だけれど、このラノ2022新作1位はこの作品になるべきだと思うし、この作品になると思う。

 

 今回は、物語自体に関するネタバレは基本なし(プロローグを2文だけ引用)です。

 ということで、未読者もどんどんこの記事読んでくれよなと言いたいところですが、どこまでをネタバレなしと言っていいのか自信がないので、未読の方は自己責任で。

 

 

 

誰にでも勧めたい作品

  なぜ春夏秋冬代行者というこの作品が好きなのか、なぜ傑作だと思うのか。その理由の一つが、この作品はライトノベルらしさの良い面に溢れているということです。より正確に言うと、ライトノベルらしさの”誰にとっても”良い面に溢れていると思うのです。

 

 「ライトノベルらしさ」というのは、ラノベと言えばこういうことが多いとか、ラノベという媒体はこんな強みがあってこういう演出が見られるとか、そういった話です。

 例えば、主人公に好意を寄せるヒロインが複数いるハーレム的設定であったり、秘された能力に目覚め無双したり、ラッキースケベ的な展開があったり。あるいは、表紙・口絵・挿絵に美麗なイラストがあったり、変わったページ使いをしてみたり、もっとシンプルなことで読みやすかったり。

 

 とまあ、挙げてみて。お察しの通り、良い面と必ずしもそうではない面にまとめてみたわけですが、補足をしておくと、「必ずしもそうでない面」というのは悪い面というわけではありません。

 大好きというわけではありませんが、俗にいうハーレムものも主人公最強系も読めば面白いですし全くもって嫌いではありません。ラッキースケベだって、読者に読み続けさせるためのエンターテイメント性として優秀でしょう。

 

 しかしです。それらが受け入れがたいという人もいるのです。ちょっと露出の多い女の子が表紙の作品を読んでいれば、「何それエロ本?」と聞いてくる輩もいるのです(私怨)。

  少々極端なことを言いましたが、そう思う感性も当然のことです。むしろ全人類が小学生の女の子を愛でる描写を受け入れられたら困るでしょう。

 

 と、ここで話を戻して。そんなサブカルチャーに染まりきってない人にも勧められる作品が春夏秋冬代行者だと思うのです。

 今後、どんな人にラノベを勧める時でも必ず最有力候補に挙がると思います。前述の理由から、そして何より、面白いから。

 

 

暁佳奈先生の文章が一番好きかもしれない

※ 物語に関するネタバレは基本ないといいましたが、ここから文章に関するネタバレは多分にあります。

 

 暁佳奈先生の文章が一番好きかもしれない、と冒頭数ページの時点で思いました。

はじめに、冬があった。

 に始まり、

かくして世に四季の代行者が生まれたのである。

 に終わるプロローグの時点でです。

  「かくして」のような文語チックな言い回しに弱いんですよね。他作品ですが、”――かくして世界は作り替えられました。”とか。

 

  そして、読み終わってからも、今感想を書きながらも、暁佳奈先生の文章が一番好きかもしれないと思っています。

 

 一文一文の言葉選びも、それによる和の雰囲気も好きです。大胆にプロローグの文章を繰り返すのも好きです。しかし、何より文章のリズムが好きなのです。

 

 ”――”(ダッシュ)に続く内心のセリフと、”「」”の口に出しているセリフ、あるいは地の文。それらが交互に続く文章のリズムが大好物で、この作品はそれが多い。

 

 また、間に地の文を挟みながらの魔法の詠唱も大好物です。ハイファンタジーにある描写ですが、ローファンタジー(?)のこの作品には代わりに歌があり、その文章のリズムも最高でした。

 

 またまた、

 一年目。~~~

 二年目。~~~

 三年目。~~~

といった類の文章のリズムもこれまた大好物で、本当に素晴らしかったです。

 こうして気持ちをアウトプットしてみると、一番好きかもしれないではなく、一番好きだなと思えてきました。

 

 

 

 と、ここまで文章だのなんだのについてを多く語りましたが、物語自体も今後忘れられないだろう傑作です。ラノベを読んで、過去一番泣きそうでした。

 未読の方は是非読みましょう。既読の方は是非勧めましょう。

 それではまた。