【感想】Unnamed Memory -after the end- I
喪失は、それがいつか贖われると信じられるのなら、痛みをもたらさないでいられるだろうか。
『Unnamed Memory -after the end- I』
著:古宮九時 イラスト:chibi
の感想です。
やはり作品の性質もあって、あまりネタバレネタバレした感想をTwitterにあげたくないわけです。「感想ツイート何件か見かけるしアンメモ面白そうだな」と手に取る未来の読者の可能性を考慮すると。
しかし! それ以上に! 内容に触れて語りたい!!!!!
ということで久々のブログです。未読の方は、ぜひ作品を読んでまた来てください。アンメモ面白いよ。
この世界より密やかに始まりを告げよ
十二の呪具を壊せ、と。こういう強大な力を持つ物品を並列されるとワクワクしてしまう。”呪具”であるし、そんな明るいものではないけれど、ワクワクするものはワクワクするんですよ。RPG由来のファンタジー好きだからでしょうか。
「せめてそれまでは、あの人には普通の人間としての幸福を得てもらいたいですしね」
ここ、すごく好き。変質を伝えたならば、あくまで相対的にだけれど死別の際のオスカーの悲しみは減ると思う。ティナーシャだって一人で抱えないほうが楽ではないだろうか。でも、何でもかんでも伝えるんじゃなく、オスカーという人間を信頼しているから尊敬しているから愛しているからこその選択というか、言葉にすると陳家な感じがしてしまうかもしれないけれど、そういうティナーシャの考え方の素敵な部分をとても感じる。
焼き付いた影
身分に縛られないオスティナが本当に好き。オスカーとティナーシャの好きなところを考えていったら、王としての在り方が上がるのは間違いないんですよ。でも、しがらみなく各地に赴く2人を見たかったのも事実で、それが叶っている。
ファンタジー世界での「旅」が好きなんです。屋敷を拠点として転移魔法で各地へ、ですから如何にもな旅ではないですけど、呪具を探しての長い長い旅の始まり、好きじゃないわけがない。
そして、ate初の(通算4つ目の)呪具、「記憶の小匣」が登場と。匣なんて使ったことのない、個人的には見慣れない字だけれど、だからこそ小箱より異質感があっていいなと思ったりします。特に単に小匣とだけ言うときには。
狂い刃
狂い刃、強すぎでは?? 別位階に潜伏して突然転移してしてくるのは流石に厄介が過ぎる。ここ、ただ無から現れるだとか言われても十二分に面白いのに、ティナーシャが解説してくれるの良いですよね。
付随しての転移魔法の仕組みが特に好き。本編でも解説されてたのを忘れているだけかもしれないけれど。人間界と魔力界での距離の違いっていうのが、マイクラのネザーみたいな感じかなと思って(違うけど)、腑に落ちます。
双頭の蛇
喪失は、それがいつか贖われると信じられるのなら、痛みをもたらさないでいられるだろうか。
懺悔します。2人が変質して、死別を克服した幸せを手に入れたと考えていた節がありました。けれど、そう。死別が辛くないわけがない。にも拘らず、死を軽く見ていたのです。
223ページ。その1ページに印字されたたった2行。
1行目を読み呼吸が止まり、2行目を読み感情が溢れる。
あまりに名文。嘆き悲しみを楽しむ趣味はないけれど、この1連のシーンが本当好き。悲劇的なシーンで改めて読者にとって分かる形で現出する想いがある。それが好き。実際、正直本編6冊を読んでなお、ティナーシャのオスカーへの想いを舐めていたらしい。そこで、嗚呼なんて愚かしく表面的に彼らの愛を考えてしまっていたのだろうと気づくわけです。何度でも言う。大好き。
そして、ついに登場するラジュ。オスカーと同じで違ってやっぱり同じなんですよね。
公人として生まれたオスカーとラジュでは全く違う。それでも、ラジュはデジャビュを感じるし当然ティナーシャに惹かれる。そして、差し出された彼女の手を取り返せるほどの力が要ると考える。まさしくオスカー。そして、実際に鍛え強くなる。まさしくオスカー。そして、叶えていない約束で彼女を縛ってしまうことを嫌って、その時まで口にしない。まさしくオスカー。
同じくこの時、ティナーシャもあなたはオスカーなんだだとか言わないんですよね。このお互い伝えない各々の考えがまたとてもとても好き。
きっと歴史のどこを切り取られても2人が好きだから、何度も何度も幸せになってほしい。何度もではなく1度いつまでも2人でいられるならそれに越したことはないかもしれないけれど。
と、読了後の興奮を凡そ吐き出し語れたのでこの辺りで。感想を言葉にするって難しい。なんか変なことを書いてしまったかもしれないけれど、要約すると最高だったってことです。以上。
それではまた。